NONMEM7初心者コースに参加して(2)
国立病院機構東京医療センター 薬剤科
赤木 祐貴
平成24年11月に国立病院機構東京医療センターで開催されたNONMEM研修会に参加しました。昨年も参加しましたが、途中から理解が追いつかなくなった点を反省し、再チャレンジすることにしました。
午前中は、NONMEM概論(講師:国立病院機構神奈川病院 河野晴一先生)の後にNONMEMの基礎講義と演習(講師:国立病院機構東京医療センター 西村富啓先生、安藤菜甫子先生)を受講しました。NONMEMとはNonlinear mixed effect model(非線形混合効果モデル)の略称であり、母集団に対する薬物動態を把握する方法の1つとして知られており、母集団平均、個体間変動、個体内変動を同時に推定することが可能である点が大きな特徴です。母集団薬物動態解析と誤差についての講義の後、実際に各自のPCを用いてNONMEMを起動し、練習用のデータを用いて演習を行いました。手順通り正しくデータをセットし、コントロールファイルで構造モデル・誤差の種類・パラメータの初期値・解析アルゴリズムの種類などを指定します。結果をアウトプットしたら、計算が正常に収束しているか確認し、解析結果の妥当性をチェックします。演習用のデータファイルをもとに実際に作業をして理解しながら進めることができました。
午後はいよいよ応用編で、PKモデル化と共変量探索を行い、最終モデル(Final model)を決定する演習(講師:国立がん研究センター中央病院 本永正矩先生)です。医薬品の臨床薬物動態試験には標準的な薬物動態試験と母集団薬物動態試験とがあります。前者は厳密に管理された単回投与試験と反復投与試験によるもので、十分な測定点が確保されるのでモデルに依存せずに各種パラメータが求められます。一方、後者は多数の被験者を対象とするものの、個々の被験者の負担は少なくてすみ、小児や高齢者のような特殊な集団に適していると考えられます。実際にNONMEMによる検討がなされた承認薬として、小児を想定したアレグラ®(フェキソフェナジン)や高齢者を想定したウリトス®(イミダフェナシン)などが挙げられます。演習では共変量(薬物動態パラメータに影響を与える変動要因)の探索を行いました。例えば、ある薬物のクリアランスや分布容積が、性別・体重・アルブミン・ALT・CCRとどのような相関があるかを探索する場合、まずBase modelに予想される共変量を1つずつ組み込んでいき一番フィットする組み合わせ(Full model)を見つけ出します。そのあとに、今度はFull modelから共変量を1つずつ抜いていき、Final modelを探していきます。昨年は時間が少なかったこともあり、上辺だけの理解に留まっていましたが、今回は演習に十分な時間があり、Base model からFinal modelまで探索することができ、共変量を求めることができました。
NONMEMによる母集団薬物動態解析を、臨床データをもとに行う手法を身につけることができれば、臨床研究への応用も可能と思われます。まだ十分に理解できていないことが多々ありますが、書籍(医薬品開発ツールとしての母集団PK-PD解析〔入門からモデリング&シミュレーション〕、緒方宏泰編集、朝倉書店)も購入しましたので、見直しながら実際に応用できるようチャレンジしたいと思います(ハードルは高いですが…)。なお、実際に手を動かしてみると順を追って理解できますが、まだ研修を受講されていない方が自分の力で学習するのは結構大変だと思いますので、是非、NONMEM研修会に参加されることをお勧めします。
最後になりましたが、多忙な日常業務の合間を縫って研修会の準備・開催をしてくださった先生方に御礼申し上げます。